oneself 後編
その時、頭の後ろで、店長の声がした。


「ミライちゃん、大丈夫?」


あたしの行動を、さぞかし不審に思ったからだろう。


「あ、大丈夫です…」


「そっか、良かった」


店長はあたしの隣にゆっくりと腰をおろすと、ふーっと一息ついた。


「どう、少しは慣れた?」


つぶらな瞳をパチパチとさせる店長の顔を見ると、気を遣わせている事を申し訳なく思った。


「何か忙しいのに、すいません…」


そう答えた後、これじゃ答えになってないじゃないかと気付いた。


「あ、えっと、その…、少しは慣れた…かな」


慌てて笑って見せるあたしに、店長は安心したような顔を見せた。


「初めてなんやし、しんどくなったら言うてな。ゆっくり慣れていってくれればいいから」


ゆっくり慣れる…


それはどういう意味なんだろう。


後何時間かの間で?


きっと違うよね。


店長はあたしがこのお店で働く事を、望んでくれてるのだろうか?


そうだとしたら…


やっぱり嬉しい。


あたしは店長を真っ直ぐに見つめた。


「はい、頑張ります」


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