oneself 後編
交代を促す店長の言葉に、客は残念がる様子もなく、「いってらっしゃい」と、余裕の表情で彼女に手を振った。


スッと立ち上がった彼女はあたしを見ると、「お願いね」と、ニッコリ上品に微笑んだ。


遠目に見ていた時よりも、ずっとずっと綺麗な人だった。


女のあたしでもドキッとするような、胸元が大きく開いたドレスから見える、白い肌。


何カップくらいあるんだろうか?


それでいて、膝丈のスカートから伸びる、形の良い細い足。


スタイルも抜群だった。


別の席へと歩いて行く彼女の後ろ姿に、あたしは思わず見とれていた。


「どうぞ」


客の声がして、はっと我に返る。


「あ、初めまして、ミライです」


何度も言ったセリフを、ここでも繰り返す。


ソファーを掌で指す客の隣に、今までよりも緊張しながら、丁寧に礼をしてから腰かけた。


「初めて見る顔やな、最近入ったん?」


あたしの顔をまじまじと見つめながら、客が問いかける。


彼は常連さんなんだ。


「えっと、今日が初めてなんです」


このセリフも、何度口にしただろう。


そして彼は、どんな反応をするのだろう。


ドキドキしながら次の言葉を待つあたしに、彼は笑顔で言った。


「そうなんや。まぁ何か飲み」


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