oneself 後編
まさか…ね?
友達の手前、指名してくれたんだよね?
「って事で、ミライちゃん仲良くしてあげて」
メールなら語尾にハートマークがつきそうな、そんな調子で波多野さんがあたしに向かって微笑む。
「お前もちょっとくらい話せよ。ミライちゃんが困るやろ」
そう、彼にも付け加えて。
言いたい事だけ言って、二人はまた楽しそうに話し出す。
あたしは、なおもうつむいたままの彼を、黙って見つめていた。
そんなあたしの視線に気付いたのか、彼はようやくゆっくりと顔を上げた。
「ごめんな、こういうとこって苦手で…」
聞こえるか聞こえないか、分からないくらいの声で、初めて彼が話しかけてきた。
「えっ?」
あたしは聞き取りにくかった為、少し彼に顔を近付けた。
「ごめん、緊張してるねん…」
「えっ?」
今度は聞き取りにくかった訳じゃない。
ただ、キャバクラに来て緊張する男の人もいるんだという事に、驚いたのだ。
さっきから「えっ?」としか言わないあたしに、前田さんは困ったように、次の言葉を探しているようだった。
そんなに悪い人じゃないのかも知れない。
きっと波多野さんの言葉を受けて、彼なりに頑張ってくれているんだと思った。
友達の手前、指名してくれたんだよね?
「って事で、ミライちゃん仲良くしてあげて」
メールなら語尾にハートマークがつきそうな、そんな調子で波多野さんがあたしに向かって微笑む。
「お前もちょっとくらい話せよ。ミライちゃんが困るやろ」
そう、彼にも付け加えて。
言いたい事だけ言って、二人はまた楽しそうに話し出す。
あたしは、なおもうつむいたままの彼を、黙って見つめていた。
そんなあたしの視線に気付いたのか、彼はようやくゆっくりと顔を上げた。
「ごめんな、こういうとこって苦手で…」
聞こえるか聞こえないか、分からないくらいの声で、初めて彼が話しかけてきた。
「えっ?」
あたしは聞き取りにくかった為、少し彼に顔を近付けた。
「ごめん、緊張してるねん…」
「えっ?」
今度は聞き取りにくかった訳じゃない。
ただ、キャバクラに来て緊張する男の人もいるんだという事に、驚いたのだ。
さっきから「えっ?」としか言わないあたしに、前田さんは困ったように、次の言葉を探しているようだった。
そんなに悪い人じゃないのかも知れない。
きっと波多野さんの言葉を受けて、彼なりに頑張ってくれているんだと思った。