oneself 後編
それからは、前田さんはすっかり心を開いてくれた様子だった。
慣れてきて一度心を開くと、けっこう喋れるところは、あたしと似ているかも知れない。
あたしに彼氏がいない事を、「良かった」と言った彼は、積極的に色々な事を聞いてきた。
少し困ってしまうような質問には、嘘で返した。
これからの事なんて、考えてなかったから。
ただ、今のこの状況を、彼に満足してもらえるように。
その席について1時間ほど経った頃、スタッフが時間を知らせに来る。
「延長してよ~」と、甘えた声を出す翼に、波多野さんは申し訳なさそうに、チェックを告げた。
「また今度来るから。今日はもうお金ないねん」
また今度という言葉に、翼は「絶対だからね!」と、小指を絡ませた。
前田さんも残念そうな顔で、「また来るから」と、言ってくれた。
ゆっくりと席を立つ二人。
「ありがとうございました」
スタッフの声を背中に、お店を出て、エレベーターの所まで送る。
「また来てね~!」
そう言いながら、波多野さんに抱きつく翼。
あたしはその光景を、びっくりしながら見つめていた。
到着したエレベータに二人が乗り込み、あたし達はドアが閉まるまで、手を振り続けた。
ガタン…
鈍い音をたてて、動き出したエレベーター。
それを確認した翼は、「あ~疲れた~」とぼやきながら、お店の方へと歩き出した。
慣れてきて一度心を開くと、けっこう喋れるところは、あたしと似ているかも知れない。
あたしに彼氏がいない事を、「良かった」と言った彼は、積極的に色々な事を聞いてきた。
少し困ってしまうような質問には、嘘で返した。
これからの事なんて、考えてなかったから。
ただ、今のこの状況を、彼に満足してもらえるように。
その席について1時間ほど経った頃、スタッフが時間を知らせに来る。
「延長してよ~」と、甘えた声を出す翼に、波多野さんは申し訳なさそうに、チェックを告げた。
「また今度来るから。今日はもうお金ないねん」
また今度という言葉に、翼は「絶対だからね!」と、小指を絡ませた。
前田さんも残念そうな顔で、「また来るから」と、言ってくれた。
ゆっくりと席を立つ二人。
「ありがとうございました」
スタッフの声を背中に、お店を出て、エレベーターの所まで送る。
「また来てね~!」
そう言いながら、波多野さんに抱きつく翼。
あたしはその光景を、びっくりしながら見つめていた。
到着したエレベータに二人が乗り込み、あたし達はドアが閉まるまで、手を振り続けた。
ガタン…
鈍い音をたてて、動き出したエレベーター。
それを確認した翼は、「あ~疲れた~」とぼやきながら、お店の方へと歩き出した。