oneself 後編
「早くサングラス取りなよ。怖い人みたいだし」


からかう翼に、店長はゆっくりとサングラスを外した。


「初めまして、店長の伊藤です」


胸ポケットから取り出したケースから、名刺を差し出す店長。


あたしはそれを、軽く頭を下げて受け取った。


サングラスを取った彼の顔は、意外にもつぶらな瞳で、相撲で有名な人に似ていた。


「どうぞ」


先ほどカウンターにいたスタッフが、飲み物を運んで来る。


「え、オレンジジュース?」


スタッフの顔を不思議そうに見上げて尋ねる翼に、すかさず店長が言った。


「俺が好きやねん。面接の時はオレンジジュース。なっ?」


そう言って、スタッフにいたずらっぽく笑いかける店長に、見た目とのギャップを感じた。


「え〜、あたしの時、何か出してくれたっけ?」


う〜んと思い出そうとする翼。


「お前の時は水や!」


「何それ、ひど〜い!」


そんな二人の掛け合いに、思わず吹き出してしまい、少しだけ緊張が和らいだ。


結局、翼はスカウトの人も含め、喫茶店で面接をした事を思い出し、すっきりしたようだった。


そんな話をしているうちに、刻々と開店の時間が迫る。


腕時計をチラリと見た店長。


「よし、じゃあ簡単に説明していくな」


ついに、面接が始まった。


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