oneself 後編
そろそろ日付が変わる頃。


一時期は満席だったお店も、終電の関係か、少し落ち着きはじめていた。


戻って来たあたしと翼は、フーッと言いながら待機用のソファーに腰掛ける。


「良かったね、指名取れて」


そう笑いけける翼に、「うん」と頷いた。


「あの人、絶対引っ張れるよ。連絡先交換した?」


「してない…」


そんなあたしに、翼は「え~!」と驚いていた。


テレビなどで見る、こういうお店を扱った番組では、必ずそういう場面が出て来る。


「昨日はありがとう」


そう言って、お礼を言っている場合もある。


「今から来てよ」


そう言って、誘っている場合もある。


何にせよ、もし仕事を続けていくならば、そういう営業も必要になるのは分かっている。


哲平も言ってたよね。


でもあたしは、今日以降続けるかどうか、まだ分かんないし。


会ったばかりの人に連絡先を教えるのは、何となく抵抗があった。


あたしはこの先、どうするんだろう…


もうすぐ決めなきゃいけない時が来るのに…


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