oneself 後編
何に悩んでる…?


あたしは店長の言葉を頭の中で反芻させながら、考えてみた。


本当に、あたしは何に悩んでいるのだろう。


自分自身でも、その答えが分からなかった。


ホストを始めた哲平。


キャバクラで働いているという遠藤さん。


そんな話を聞いても、自分がそこで働くという選択肢なんて、思い浮かばなかったのに。


翼にお金の事を打ち明け、そして誘われて、トントン拍子に決まった今日。


だから今でさえ、あたしは夢を見ているんじゃないかなんて気持ちもあった。


もしかしたら、哲平もこんな感じだったのかも知れない。


そんな事をふと思った。


それでも、働く事を決意した哲平。


どこに惹かれて、どこにやりがいを見つけたのだろう。


その答えに、あたしは少なからず気付いていた。


あの、指名をもらった時の喜びを。


あの時、大学にかまけていたあたしを、淋しく思っていた哲平。


今、仕事に夢中の哲平を、淋しく思っているあたし。


そんな中で、自分が輝ける場所であり、自分を認めてくれる人がいる場所。


時期は違えど、あたし達がこの仕事に魅力を感じる要因は、そこにあるような気がした。


哲平なら、あたしの気持ちを分かってくれるよね…?


黙ったままのあたしを、何も言わずに待っていてくれる店長。


あたしは大きく息を吸った。


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