oneself 後編
その時、体を少し前のめりにした翼。


「あのさ…」


「ん、どうしたん?」


何か言いたげな目で、テーブルの上に組んだ両手を見つめている。


「お待たせしました」


店員がさきほど注文した飲み物を運んで来ると、翼はすかさずそれを手に取り、一気に半分ほどを飲み干した。


彼女のお酒の強さに感心しながらも、次の言葉を待っていた。


考え込むような翼の様子に、あたしも飲み物を口に含んだ時だった。


「ね、ホストってどう思う?」


あまりに唐突な質問。


あたしは吹き出しそうになるのを必死でこらえ、ゴクリとのどの奥に流し込むと、冷静を装って尋ねた。


「いきなりどうしたん?」


あたしに彼氏がいる事は、翼も知っている。


でもそれ以上の事は、もちろん話した事はない。


それを知っているのは、幸子と香だけだ。


もしかして、翼は知っているの?


この狭いミナミの中、一緒にいるところを見られていたとしても、おかしくはない。


瞬きしながら、あたしの反応を待つ翼。


何て言おう…


お酒で靄がかかったような頭の中を必死で整理し、次の言葉を探していた時だった。


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