oneself 後編
それから、翼はその彼との経緯を嬉しそうに話し出した。


1ヶ月ほど前、仕事に出勤する途中に、声をかけられた翼。


「普通なら無視するんだけど、彼がすっごい不安そうな顔だったからさ。何か本当に困ってるのかもと思って、立ち止まっちゃったんだよね」


そう言って、翼は懐かしそうに目を細める。


「そしたら結局キャッチだったんだけど、その台詞があまりにも棒読みでさ」


そして、クスッと思い出したように笑う。


その全ては、好きな人の話をする女の子そのもので。


少し照れたように話す翼を、かわいく思った。


その後、彼に興味が湧いた翼は、しばらく彼と話した後に、番号を交換し、連絡を取るうちに、お店に通うようになったと言った。


テレビで見た事はあっても、自分には関係のない世界。


ましてや、自分はハマる事などないと思っていた。


そう翼は話す。


「だけど何回かお店に通ってるうちに、どんどん好きになっちゃって…」


やっぱりホストクラブに通う女の子達は、指名したホストの子に、そういう感情を抱くものなのだろうか?


哲平のお客さんも、そうだとしたら…


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