oneself 後編
場所はホストクラブの店内だろうか。


肩を寄せてソファーに座る、幸せそうな笑顔の翼と。


そして、クリッとした目が印象的な、あどけない表情の彼。


哲平じゃなかった。


肩の力が抜けて、胸に広がっていく安堵感。


本当に良かった。


「名前は何ていうの?」


そう尋ねたあたしに、翼は笑顔で、「ハルだよ」と、答えた。


「はい、じゃあ次は未来ちゃんの番ね!」


イタズラっぽく笑う翼に急かされ、鞄の中を探る。


そして手帳を取り出し、それに挟んである、卒業式の写真を1枚、翼に差し出した。


「え〜!すごいかっこいいじゃん!」


目を大きく見開いて、高い声を上げる翼。


そんな反応から、哲平の事を知っている様子でもなく、お店も別なんだという事が分かった。


「へへっ」と笑いながら、軽く頭を掻くと、すぐ隣に置いてあるグラスが目に入る。


まだ3分の1ほどしか飲んでいない、柚子サワー。


あたしはそれを手に取ると、普段よりも長めに、一気に喉の奥に流し込んだ。


「フウーッ」


一息つきながら、グラスをコースターの上に戻す。


そしてあたしは、翼の顔を真っ直ぐに見つめた。


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