oneself 後編
もう閉店間近の店内は、数えるくらいしか客はいない。


ラストオーダーを取りに来た店員の一声で、もうそんな時間なんだと気付いた。


それくらい、あたし達は夢中で話していた。


店員に温かいお茶を頼むと、間もなくしてそれは運ばれてきた。


熱い湯呑みを遠慮がちに触ると、何故だか少し落ち着いた。


そしてそれを、一口喉に流し込む。


さっきまでのフワフワとした感覚が、スーッと引いていくようだった。


こんなに、と言っても、3杯しか飲んではいないが、それでもあたしからしたら、初めての事。


もしお酒を飲んでなかったら、こんな話はしていただろうか。


そう考えると、お酒の力に感謝した。


幸子や香に話した時よりも、1番素直に自分の気持ちを話せた気がする。


そしてそれを分かってくれる翼に、勇気付けられた。


温かいお茶をすすりながら、翼が宙を見ながら呟いた。


「相手がどんな人でも、例えば彼女がいたってさ。それでも好きなんだもん。それって相当だよね」


彼女がいても…


ふいに奈美と香の事が、頭をよぎった。


辛い恋愛になると分かっていても…


すぐに気持ちは、切り替えられないよね。


「そうやな」


あたしは溜息と一緒に、その言葉を吐き出した。


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