oneself 後編
そんなあたしの様子に気付かない哲平は、「うん?」と呑気な声を出す。


「昨日の事やねんけど…」


少しだけいつもより低い声でそう言ったあたしに、ようやく哲平は何かを感じたのか、ゆっくりと体を起こした。


「どうしたん?」


「ホンマはバイトしててん」


下手に間を空ければ、余計に言葉に詰まりそうで。


あたしはそれだけ言うと、哲平の反応を待った。


きょとんとした顔で、あたしを見つめ返す哲平。


「バイト?」


「うん、友達に誘われて、キャバクラの体入行ってた」


哲平から目をそらし、床を見つめながら、一気に打ち明ける。


何て言われるだろう。


俯きながら哲平の言葉を待つあたし。


それは、思っていたよりもずっと長くて。


テレビからは、相変わらずどこかの芸人の甲高い声が聞こえる。


この場の沈黙が、余計に際立つようだ。


何も言わない哲平に、恐る恐る顔を上げると、そこには顔をしかめる哲平の姿。


「嘘付いてて、ごめんなさい…」


思わず敬語になってしまう。


あたしはもう一度、床に視線を落とした。


何て言えばイイんだろう。


何か言ってよ。


再び流れる沈黙に、唇を噛み締めながら耐えた。


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