oneself 後編
怒ってるの…?


正直、あたしは戸惑っていた。


哲平は本当に温和な性格で、こんな姿を、今まで見た事がなかったから。


「嘘付かれたんもムカつくけど」


ようやく頭の上で聞こえた哲平の声に、ハッと顔を上げる。


「それはいつ決めたん?」


目を細めながら、哲平が低い声で尋ねる。


「金曜日…」


あたしは翼の存在。


携帯代を払わなくてはいけない事。


哲平には相談したかったけど時間が合わなかった事。


それらを順に話した。


分かってくれるよね?


キャバクラの仕事だって、哲平なら理解があるはずだし…


あたしの話を聞きながら、軽く溜息を吐いた哲平。


「確かに未来もバイトせなしんどいやろうし、俺に話す時間がなかったんも分かる」


そう言った哲平の表情は、さっきより少しだけ柔らかくなった気がした。


ホッと胸を撫でおろす。


「でも…」


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