oneself 後編
そんなあたしの行動に、隣ではホッとした様子の翼が、ドカッとソファーの背もたれにもたれかかった。


「今日は仕事終わったら、どっか飲みに行こうね〜」


「うん」


今日あたしは、両親にも哲平にも、友達にはもちろん何も言わずに、ここに来ていた。


仕事が終わった時間には、家には帰れないという事を事前に翼には話していたので、そう言ってくれたんだろう。 


両親には、友達とご飯を食べに行った後、友達の家に泊まると伝えた。


そして後々は、日払いの派遣のバイトを始めたと嘘をつこうと思っていた。


哲平には話そうか悩んだが、何せ昨日の今日。


これが決まった時、哲平の仕事はすでに始まっていたし、今日の昼過ぎに仕事が終わってからは、相当飲まされて酔っ払っているようで、早々に電話を切った。


正直、哲平が快く賛成してくれるのか、それとも反対するのか、あたしには想像がつかなかった。


普通のカップルなら、どんな反応をするんだろう?


ホストの哲平は、何を思うのだろう?


あたしと同じように心配で引き止めて欲しい反面、お金が必要で、翼や店側にも約束をしてしまった今、止められては困るという気持ちもあった。


ゆっくりと話せる状況で打ち明けたい。


それを理由に、哲平にも嘘をついた。


様々な事が頭をよぎる中、あたしはペンを休める事なく、一気に用紙に記入していった。


もう決めたんだ。


だから今、あたしはここにいる。


もし合わなければ、今日で辞めればいい。


それは翼も気にするなと言っていた。


だから今日は…


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