oneself 後編
そんなあたしに全く気付く様子のない哲平は、一方的にその日を指定してきた。
「明日1部であがらしてもらうわ。その後にしよ」
あたしの都合なんて、お構い無しなんだ。
例えば哲平が、仕事を休んでくれたら。
2部を休むのではなく、1部を休んでくれたら。
あたしは日がかわる頃には、家に帰って来れる。
両親にも、嘘を付かなくて済む。
昔の哲平は、そんな事にも気配り出来る人だったのに。
高校生の頃。
「早く帰らんで大丈夫?家の人心配せえへん?」
そう言ってくれていた哲平は、どこへ行ってしまったんだろう。
「勝手やな…」
あたしは溜息混じりに、そう呟いた。
数秒間の沈黙。
「ごめんな…」
低いけれど、さっきみたいに刺々しくはなく、頼りない声。
電話の向こうで困った顔をする哲平の姿が、何となく想像出来た。
あたしは言いかけた言葉を、ぐっと飲み込んだ。
「分かった、明日な」
哲平の反対を押し切ってまで働いたら。
別れが待っているかも知れない。
哲平とこんな関係のままじゃ。
誰かに取られてしまうかも知れない。
だから、会ってちゃんと話をしなきゃ駄目だと思ったんだ。
「明日1部であがらしてもらうわ。その後にしよ」
あたしの都合なんて、お構い無しなんだ。
例えば哲平が、仕事を休んでくれたら。
2部を休むのではなく、1部を休んでくれたら。
あたしは日がかわる頃には、家に帰って来れる。
両親にも、嘘を付かなくて済む。
昔の哲平は、そんな事にも気配り出来る人だったのに。
高校生の頃。
「早く帰らんで大丈夫?家の人心配せえへん?」
そう言ってくれていた哲平は、どこへ行ってしまったんだろう。
「勝手やな…」
あたしは溜息混じりに、そう呟いた。
数秒間の沈黙。
「ごめんな…」
低いけれど、さっきみたいに刺々しくはなく、頼りない声。
電話の向こうで困った顔をする哲平の姿が、何となく想像出来た。
あたしは言いかけた言葉を、ぐっと飲み込んだ。
「分かった、明日な」
哲平の反対を押し切ってまで働いたら。
別れが待っているかも知れない。
哲平とこんな関係のままじゃ。
誰かに取られてしまうかも知れない。
だから、会ってちゃんと話をしなきゃ駄目だと思ったんだ。