oneself 後編
「未来ちゃん、次の出勤いつにする?」


鞄の中のテキストを取り出しながら、翼が尋ねる。


「あ、その事やねんけど…」


あたしは昨日の事を、早口で話していく。


「そっか…」


がっかりしたような表情を浮かべる翼に、申し訳なさでいっぱいになる。


ちょうどその時、先生がやって来た。


「でも彼氏が反対なら、あたしやお店の事は気にしないでね」


そう言ってくれる翼の気遣いに感謝しながらも、「またお昼に話す」、とだけ言って、あたし達は押し黙って授業に専念した。


そして昼休み。


人で溢れる学食で、やっとの事で席を確保すると、翼に朝の続きを話し出す。


「でもさ、普通の恋人同士なら、やっぱ嫌だろうしね」


普通?


哲平はホストなのに?


「まぁそれだけ、二人は本物って事だよ」


そう言って笑う翼の言葉の意味は、あまり良く分からなかったけど。


ハル君の事を嬉しそうに話し出した翼に、それ以上何も言えなかった。


同じホストという職業の人を好きなのに、あたしと翼は、何でこんなにも違うんだろうな。


そうしているうちに、昼休みは終わり、お互いに「また連絡する」と言い合って、午後の授業がある教室へと向かった。


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