†危険な男†〜甘く苦い恋心〜
「――…あ」
それは物を整理していた時のことだった。
あたしは実家に忘れ物をしていたことに気付いたのだ。
「いけない…。取りに行かなくちゃ……」
あたしはケータイを手にし、実家に掛けようとした。
――けど。
その手はすぐに止まった。
実家ということは…イコール、あの男もいるってことだ。
そう考えただけで…体が震える。
「……っ…」
けど…今、取りに行かなかったらもうずっと行けないような気がする。
もう…あの家には帰らないつもりだったから。
「……よし。行くか」
あたしは心を落ち着かせ、実家に電話をする。
――プルルル…プルルル…
ドクンドクンと胸が高鳴る。
お願い。
アイツは出ないで。
お母さんが出て――…
――ガチャッ
呼び出し音が止んだ。