†危険な男†〜甘く苦い恋心〜
『はい、宮崎でございます』
電話に出たのは母だった。
あたしは一気に安心する。
「あ……お母さん?久しぶり。あたし、樹里」
『あら、樹里?どうしたのよ。珍しいじゃない…あなたが電話してくるなんて。』
お母さんは驚きの声を出す。
「あ、うん。あのね…ちょっとそっちに忘れ物しちゃって……出来れば送って欲しいんだけど……」
お願い、お母さん。
“いいわよ”って言って…。
『忘れ物?だったらあなた、実家に帰ってきなさいよ。もうしばらく会ってないんだし』
やっぱり。
そうなるよね…。
「え、と…。あたしもちょっと忙しくて……実家に行ってる暇がないっていうか……」
『え〜?それでも来なさいよー。久しぶりに会いたいし…』
お母さんは寂しそうな声でそう言った。
「で、でも……」
『お義父さんも待ってるし。明日なら2人でいるから来なさい。ね?』
う、そ…。
明日、義父いるんだ…。
あたしの手は小刻みに震え出す。
『樹里?』
「あ、うん。分かった…。じゃあ明日行くね。おやすみ……」
あたしは一方的に電話を切った。