†危険な男†〜甘く苦い恋心〜
「ありがとね?廉」
「何がだ?」
廉は不思議そうに首を傾げた。
「一緒に……実家、来てくれて。ホント助かった」
ホントは……実家に帰るのが心配で仕方なかった。
もうあの頃みたいに弱くはないのに。
反撃できるくらい強くなったのに。
それでも…過去の傷はあたしを離そうとはしない。
むしろ、あたしを縛り付けるように……実在する。
「……樹里」
あたしの問い掛けにしばらく沈黙した廉は、再び口を開いた。
「ん?」
「今日…お前の義父(オヤジ)さん、いんのか?」
ドクンッ!!
身体中から変な汗が吹き出てくる。
あの男が今日いることは分かってたけど……
無理矢理、考えないようにしてた。
いや…考えたくなかったんだ。
「樹里。大丈夫だ。俺がいる」
震え始めたあたしの手に、優しく手を重ねてきた廉。
温かくて、優しくて……。
あたしはうっかり泣きそうになった。