†危険な男†〜甘く苦い恋心〜
決意
そこにいたのは…紛れもない、あたしの義父だった。
蘇るあの時の記憶。
手が震えてくる。
「あら拓真(タクマ)さん!樹里の彼氏さんが来てるわよ!」
お母さんは義父を見てそう言った。
あたしは一瞬振り返ったけど、すぐに前を向いた。
義父と会うのは何年ぶりだろう。
今の仕事を始めて、ずっと実家には帰ってなかったから。
すると廉はそんなあたしの様子を察知したのか…義父を見た。
「初めまして。樹里さんとお付き合いさせて頂いてます、雨宮廉と申します。」
廉は礼儀正しく、義父に挨拶をした。
義父はギクリとしたように顔を歪ませた。
「あ、あぁ…初めまして。樹里の義父(チチ)です。」
あたしの…義父(チチ)?
間違ってるんじゃない?
“ギフ”でしょ。
「今日は急に来てしまい、申し訳ありませんでした」
「いやいや、いいんだよ。今日はゆっくりしていってくれ」
義父は廉に苦笑いを溢し、奥に入っていこうとした。
待ってよ…。
あたしは、あんたに話したいことがある。
「……待ってよ」
あたしは消えそうなくらい小さな声で義父を呼び止めた。