†危険な男†〜甘く苦い恋心〜
癒えることない傷
「――…今の…どういうこと?」
今、あたしの目の前にいるのは…誰?
信じたくない。
信じたくないから……あたしは“誰?”なんて、とぼけているんだろう。
あたしがこの人を知らないワケがないんだから。
「お…母さん……?」
あたしは小さく、その人の名前を呼んだ。
待ってよ。
早すぎる。急すぎる。
まだ…お母さんにこの事実を突き付けるのは……
「――今、言った通りですよ、お袋さん」
混乱しているあたしを他所に、廉は淡々と話し出した。
「ちょっ……れ、廉!?」
あたしは慌てて止めに入る。
けど……廉は止まってはくれなかった。
むしろその逆だ。
「ちょっと待ってちょうだい……じゃあ…樹里は私が見ていない隙に……拓真さんに……」
「そうです。樹里はあなたの旦那さんに犯され続けていたんです。それも……5年間も」
「廉っ……!」
あたしはギュッと彼の手を握った。