†危険な男†〜甘く苦い恋心〜
「お、お母さん!?」
あたしは慌ててしゃがみ込んだ。
けど、お母さんはひたすら“ごめんなさい”と繰り返すだけ。
「ごめんなさい、樹里……!あなたがそんなに辛い目に遭っていたことに気付けなかったなんて…私は母親失格だわ……!!」
お母さんはポタポタと涙を流しながら、あたしに謝る。
「お母さん……」
「ごめんなさい樹里…ごめんなさい……!!」
お母さんは床に頭を付けた。
あたしはどうしていいのか分からず、廉の方を見た。
廉は切なそうに顔を歪める。
そしてあたしの肩を抱いた。
「……お袋さん。樹里はあなたに心配を掛けたくなかったから…黙っていたんですよ。」
「……え…?」
お母さんは涙に濡れた目で廉を見上げた。
「樹里は…すごく人の気持ちに敏感な女です。いつも自分の気持ちより、他人の気持ちを最優先にする……。最高にいい女ですよ」
優しい笑顔でお母さんを諭す廉。
「……っ…廉…」
あたしは泣きそうになる。
あたしのこと…そんなふうに見ててくれてたんだ。
すごく嬉しいよ……。