†危険な男†〜甘く苦い恋心〜
どうしよう…。
すっごく気まずい。
「すみません、美姫さん。あたしちょっとお手洗い行ってきます」
あたしは美姫さんにそう言うと、フイッと顔を背け、足早にオフィスを出た。
ダメだ……あたし。
廉のことが好きすぎて…苦しい。
「はぁ…」
あたしはオフィスから出ると、溜め息を吐いた。
誰もいない廊下。
ホントは…今は1人になりたい。
けど、仕事を休むわけにはいかない。
ホント複雑よね。
そんなことを思いながら、トイレに向かおうとした刹那。
「――樹里」
後ろから聞こえた低い声。
ビクッと体が強張る。
「……廉…」
そこにいたのは、紛れもなく廉だった。
どうしていいか分からなくなるあたし。
とりあえず…この場から逃げようとした。
「待てよ、樹里。」
ギュッと手首を掴まれ、無理矢理廉の方に体を引き寄せられた。
「や…離して……」
「離すもんかよ。やっと2人になれたのに…」
廉はあたしの背中に腕を回し、ギュッと抱き締めた。