夕 月 夜
―Side K
『優一を、そっとしといてやってくれ…』
朝、日翔館にいつも通り来た俺に龍馬がそう言った。
「あぁ…」
事情を知らない俺は、曖昧で中途半端な返事しか出来なかった。
何があったんだ?
授業の真っ最中
何気なくチラリと優一の方を見やる。
いつもと変わらない。
なのに…
いつもとちがう。
優一は昔から、自分の心の内を見せるヤツじゃなかった。
他人に頼られても、優一は他人を頼らない。
昔からの悪い癖だ。