夕 月 夜


力のない声が、そう言った。


百合香。

確か…
優一が好んでいた女だ。

「死んだ…?」

「そうだよ」

「何故突然そんな…」

「分からないよ」


何故突然…
俺には大した接点はないが、衝撃は大きかった。



「だだ一つ。分かるのは…


おれは、百合香を救ってやれなかったってコトだけさ…」


救って、やれなかった…?


「百合香の寂しさを、おれは埋めてやるコトが出来なかった。

おれは、さ…。
母親の為に、健気に頑張る彼女の姿に惹かれていったんだ…。


悪化する母親の病状と、手の届かない薬代に彼女は振り回されてた。


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