夕 月 夜
沈黙を破ったのは、優一の言葉だった。
「健太郎は、健太郎のかけがえのないヒトを大切にするんだよ」
おれと同じ想いはしないでくれよ…。
と、優一は言った。
「あぁ」
としか、俺は返せなかった。
スゥーッ、はぁ…。
と、優一は大きく深呼吸をした。
「少し話したら、楽になったよ。
ありがとう、健太郎」
おれ、先帰るよ。
と、優一は帰っていった…。
俺はそんな優一の背中を見送った。
泣きそうな背中。
何もしてやれない俺。
優一が無力なら、俺はきっと無能なんだ。