夕 月 夜





「いらっしゃい、健太郎」



花月楼に着くと、鈴音が迎えてくれた。
昨日とは違って、いつも通りの佇まいさだ。


「あぁ。
今日は一人なのか?」

確か…。有月と言ったか?

「うん。
有月なら、もうとっくだよ」


今夜は早かったよ。
と、他愛のない会話を交わしながら、鈴音の部屋へ行き適当に過ごす。



なんだか とりあえず安心した。


俺の背後から、うっすらと月明かりが差していた。


「今夜は、晴れてるね」


そういえば
昨晩は、確か曇っていたな…。

「そうだな。
月がよく見えるんじゃないか」


俺が振り返って、窓の向こう 庭の方へ目を向けるとそこに居たのは…

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