夕 月 夜
「優一…」
一人片隅に佇む、優一の姿。
その足元には、小さくこんもりした山に突き刺さるように立てられた…扇子?
まるで、墓のようだ…。
優一は、その墓にしゃがみ込んで一輪の花を添えた。
あれは きっと…
百合の花だ。
優一はそっと手を合わせて、黙想をしていた。
俺と鈴音は、黙ってその様子を見つめていた。
優一の頬には、キラリと雫が蔦っていた。
一生懸命殺している声が、聞こえるような気がした。
「…何も、してやれない」
不意に、俺はそう零した。
「そんなコトない」
鈴音は、俺をしっかり見つめてそう返した。