夕 月 夜
それ程、その瞳が語るように憧れを抱くなら何故、踏み出そうとしない…?
「『踏み出せない』んだよ」
知らないの?花街の掟。
と、鈴音は言った。
花街の…掟?
「この街から逃げる者も、その手引きをする者も…
『命』を持って、その罪の重さを知るんだよ」
逃げられない。
逃げたその先に待ち受けるのは…
「そんな…、規則があったのか」
「そう。
だから、私達が外の世界へ行くことは きっと叶わないコトなの…」
寂しそうな顔。
淋しそうな声。
微かに、胸が痛む。