夕 月 夜
彼女は、おそらく俺と同じ年頃の娘なのに
叶わぬ夢を見、
この狭い空間で生きている。
俺だったら、そんな苦痛には耐えられないだろう…。
俺は、彼女に何かしてやれないのだろうか。
「ねぇ 健太郎」
不意に、鈴音に話かけられた。
「どうした?」
「健太郎や相馬様達は…
普段 どんな生活をしているの?」
そうか…。
鈴音からしてみれば、俺達は『外』の住人なのか。
「普段か?
日翔館に通っている」
「日翔館?」
鈴音は、俺の話に興味を持ったらしい。
そうだ。
俺が鈴音に、外の世界を教えてやろう。
それなら俺に、出来る筈だ。