夕 月 夜

棚から水飴を取り出した小児は、日頃欲しいと思っていた物だから、充分に食って、零して 小袖にも髪にも水飴を付けたんだ」


「贅沢だね」


「だろう。

そして
坊さんが大事にしている水瓶を雨垂りの石に打ち当てて割ったんだ」


「え?
なんで??
どうして水瓶割ったの?」


「それは、話しが終われば分かるさ」

健太郎はそう笑って、話しを続けた。

「そして
そこに坊さんが帰って来た。

そしたら小児は、涙を流して泣いていた。

坊さんが
『何事に泣いているのだ?』
と問うと、小児は…

『大切な水瓶を間違えて割ってしまったので、どんなお咎めがあるのかと恐くなり、生きていても仕方がないと思って、人が食えば死ぬと言われていた物を食べました。


< 130 / 278 >

この作品をシェア

pagetop