夕 月 夜


食べ終わった後の皿を重ねて、食事台を一つだけ、何も乗ってない状態にした。


……何を始めるのかな。


「何…するの?」


そう聞いたつもりだったんだけど健太郎は

「ひらがなから教えてやるよ」


と、答えにならない返事を返してくれた。


「鈴音、見てみろ」


健太郎はそう言って、明かりが反射して漆が黒く光る食事台に、お吸い物のフタ裏についた水滴を指先に付けて、板面を滑るように指を動かした。

健太郎の指が通り過ぎた跡には、水滴が輝いて形になっていた。


「わぁ…。
綺麗だね!」


まるで小さな宝石を並べてるみたいに、キラキラと光ってる。


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