夕 月 夜
「はぁ…」
おっと。
これじゃぁ、昴の事を言ってられないな…。
『鈴音の表情がやわらかくなったんですよ』
不意に、昴の言葉が俺の頭の中を巡る。
俺が鈴音に対して第一に抱いた印象は、『人形』だった。
幼いのに静かで、誰に対しても笑わない。
笑ったと思えば、それは作られた仮面のようだった。
鈴音も、随分成長したって事だな。
成長する事は良い事だ。
昔、亡くなった祖父がそう言ってたな。
俺は、両親よりも祖父のがずっと慕っていた。
何故なら、両親は俺に構ってくれた事は無いからだ。