夕 月 夜
独りぼっちの俺の遊び相手をしてくれたのは、決まって祖父だった。
祖母は、俺が生まれる前に亡くしたらしい。
自分にとって勿体無い程いい女だったと、何回も聞かされた。
本当は医者になって、たくさんの人間を救いたかった。だが、長男だったが故に泣く泣く家を継いだのだと…。
俺はきっと、祖父の影響を強く受けたんだろう。
祖父は、健太郎が産まれた後に亡くなった。
俺は寂しくてたまらなかった。
その日から、俺は勉強をするようになった。
『兄さん…』
健太郎が勉強している俺の後ろから様子をうかがう様に、小さく俺を呼ぶ。