夕 月 夜
「ただ想い続けるだけじゃ駄目なんだ。
伝えなければ、伝わらない…。
失ってしまう前に…後悔してしまう前に、やるべき事はしておくんだよ」
「やるべき事…」
優一はコクリコクリと頷いた。
「おれが言いたかったのは、それだけさ。
さぁ…
日が延びて明るい時間が増えたけど、あんまり遅くなると親父さんが心配するよ?」
早めに帰りなよ、それじゃ またね。と、優一は帰って行った。
やるべき事…。
それは何だ?
俺は再度、書物を開き読んだ。
しばらくして読み終わり、書物を棚に戻し書庫を出た。
やるべき事を考えながら、家路を歩く。
まだ夕方なのに、綺麗な月が出ていた。
「お母さ-ん」