夕 月 夜
「ありがとうございます。行ってきます。
健太郎、門の所で待ってて」
「おう」
健太郎は、門のある方へ歩いていった。
「気をつけなさいね」
「はい」
私はそのまま静かに早足で、部屋を出た。
裏口から共同の下駄を履いて、健太郎が待つ門へ急いだ。
どうしてか分からないけれど、無意識のうちに私は小走りになってた。
「健太郎!お待たせ」
息を切らしながらたどり着いた私の頭に、健太郎は笑いながら手を置いた。
「そんなに急がなくとも、俺はお前を置いて行かないぞ」
健太郎の温かい大きな手…
「だって…。
外 出たコトないから、嬉しいんだもん…」
そうだよ。
今 初めて、外の世界に足を踏み出したの。