夕 月 夜


「そうだったな。
じゃぁ 行くか」


健太郎は私の手を引いて、ゆっくりと歩き出した。


まだ 薄明るい空


少し前を歩く健太郎の背中。

大きな背中。


「ねぇ、健太郎。
どこ行くの?」


「まだ 内緒だ」


健太郎は振り返って、そう言った。

「凄いとこ?」

「もちろんだ」


へぇ~…、そうなんだ。
楽しみだなぁ。



木々の覆い茂る林道を抜ける。


その先には小高い丘があって、二人でその上まで行った。


「わぁ‥、綺麗…」


淡い色の空に、白っぽい月が一つ。


「お前に見せようと思ってな」


「ありがとう」


初めて見る外の景色。


部屋から眺める空とは、全く違う色。


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