夕 月 夜
「…?」
ふと、健太郎の手が離れる。
なんか…、寂しい。
「鈴音、これ――」
離れた健太郎の手にあったのは…
「わぁ…、綺麗」
小さな飾りの揺れる、簪(かんざし)。
健太郎は、照れくさそうにしてる。
「くれるの?」
「ああ、お前に似合うと思ったんだが…」
健太郎は、言葉に詰まった。そしてもう一度、私の髪に触れる。
そっかぁ…。
今日は髪を結んでないから、どうしたらいいのか考えてるのかな…?
「ありがとう、健太郎」