夕 月 夜
治療法を確立させ、特効薬を産み出し、苦しむ人々を…一人の医者として救いたいんです。
成功する保障はありません。
ですが、人々を救う為の医学的手掛かりには成る筈です。
その為にも、鈴音を引き取らせて下さい」
俺は更に頭を下げた。
しばらく 沈黙が続く。
頭を下げたままの俺の肩に、温かいモノが触れた。
「そんなに頭を下げないでくれ。
顔を上げてくれないか」
俺がゆっくりと顔を上げるとそこには、寂しそうに笑う主人がいた。