夕 月 夜


「だってお前、俺の事…」


大好きだって…

ずっと ずっと大好きだって言ってくれたじゃないか…。




「私は遊女だよ。
誰にだって、そんな事言うよ」


返ってくるのは棒読みな言葉だけ。


「親父に… 俺の親父に何か言われたんだろ。
だからって…」

「だから?
言われたよ、もちろん。

だけど、あなたのお父様の言う事を聞いても、私には何の利益もないでしょう?

それに、もう少ししたら私はお医者様のところに身請けされるの。

だから私は、幸せになれるんだよ」



鈴音…



「最初から、金だけが目的だったのか」


信じたくない…。




「ええ、それ以外にある?」



金、だけ…?


嘘だ 嘘だ。

だってお前…



俺は、信じたくない。



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