夕 月 夜



「有月、ご主人が呼んでたわよ?」

「はい、今行きます」



いつもの通り仕事が終わって、部屋に戻る途中にすれ違った小桃様に声を掛けられて、そのまま奥の部屋へ行った。



「有月です。失礼します」


静かに襖を開けて入ると、中にはご主人がいた。


「有月、お疲れ様。
こちらへ座ってくれ」


私は言われた通りに、ご主人と向かい合うように座った。


「仕事終わってすぐで悪いんだが…
話があるんだ」



なんとなく、想像はつく。きっと…


「“身請け”の話があるんだ。

悪い話ではないと思うよ」


やっぱり、豊倉様のところへの身請け話。

そんな気はしてた。





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