夕 月 夜


ある日の夕方。

俺は優一の元を訪れた。


優一の家の者に、「自室の方にいらっしゃいます」と言われ、そのまま歩いていった。


「優一、邪魔するぞ」

「どうぞ」



いつも通り、優一の部屋へ入った。


「よう」

「龍馬も来てたのか」


てっきり、優一が一人で勉強していると思っていたが、龍馬もそこにいた。


「お前、履き物が置いてなかったみたいだが…」

「龍馬はね、窓から入ってくるんだよ。いつも」

「ここから玄関まで遠いだろ。オレは無駄を省く質なんだ」


やっぱり常識から一歩外れてるな。
龍馬らしい。


「泥棒も顔負けだよ。
ほんの少し部屋を空けて戻って来たら居たんだ」


それをさらりと流す優一も、大したもんだ。



< 225 / 278 >

この作品をシェア

pagetop