夕 月 夜
ある日の夕方。
俺は優一の元を訪れた。
優一の家の者に、「自室の方にいらっしゃいます」と言われ、そのまま歩いていった。
「優一、邪魔するぞ」
「どうぞ」
いつも通り、優一の部屋へ入った。
「よう」
「龍馬も来てたのか」
てっきり、優一が一人で勉強していると思っていたが、龍馬もそこにいた。
「お前、履き物が置いてなかったみたいだが…」
「龍馬はね、窓から入ってくるんだよ。いつも」
「ここから玄関まで遠いだろ。オレは無駄を省く質なんだ」
やっぱり常識から一歩外れてるな。
龍馬らしい。
「泥棒も顔負けだよ。
ほんの少し部屋を空けて戻って来たら居たんだ」
それをさらりと流す優一も、大したもんだ。