夕 月 夜

―side R








来ないよ もう来ないよ

健太郎は、もうココには来ないよ。


どんなに待ったって、きっと来ないよ。

だって私は、健太郎に酷いコト言ったんだから…

健太郎は私なんかから解放されて、幸せに成れるんだもの。


始めっから、健太郎に私なんて必要なかったんだ…。




「あの日の月、綺麗だったなぁ…」



布団から起き上がって窓から外を見た。


綺麗な月


だけど、あの日の月はもうどこにもない。



不意に、枕元に置いてあった簪を手にとる。




「嬉しかったのに…」



あんなに嬉しかったのに、今はもう ただ辛いだけのモノ。



私、こんなにも未練がましかったんだね…。



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