夕 月 夜
懐かしい声に呼ばれた気がして振り返った。
そこには…
「…健太郎」
息を切らしてる、健太郎の姿。
うそ… もう会えないって思ってたのに…
嬉しい。だけど…
「何、しにきたの?」
健太郎を見ないように、そう冷たく言い放った。
健太郎は、息を整えるのに必死だった。
「用がないなら、私は戻るよ…」
「待ってくれ!」
逃げるように戻ろうとしたら、健太郎に手を掴まれた。
「離して…」
「諦めきれないんだ!」
私の動きが止まった。
「俺は、お前の事をキッパリと諦められる程、出来た人間じゃない…
お前の事が… 好きなんだ」