夕 月 夜
これ以上、健太郎を引きずり込むなんて出来ない。
「だから…
鈴音のコトなんか忘れて幸せになってよ…」
中途半端なままよりも、いっそ全部失ってしまった方が楽だもん…
「鈴音」
健太郎は私の身体をクルッと反転させた。
真っ直ぐ私を見つめる瞳。
「違くなんてない!
例え仕切られていようとも、同じ時代に同じ土の上、この空の下に泣いて生まれ堕ちた。
俺達の世界は、たった一つしかないんだ」
涙が止まらない…。
「でも…」
私はもうすぐ、終わってしまう…
「俺の事、嫌いか?
頼む、教えてくれ…。
もう俺を…
独りにしないでくれ…」