夕 月 夜

奥に行けば裏口がある。
私と鈴音は、振り返る余裕もなく長い廊下を全速力で走った。




「待ちやがれ―ッ!!」


後ろから男が一人追いかけてくる。


ここで捕まったら、きっと逃げ切れない…



だけど

鈴音だけでも逃がさなきゃ!


「鈴音早く!
私がココで時間を稼ぐから早く逃げて!」


裏口に辿り着いて、戸を開けた。


「行けないよ!
みんなを置いてなんて…」


鈴音はそう言って躊躇った。
だけど私は

「駄目!早く行って!!」

って、鈴音を外に突き飛ばして戸を閉めた。


物音と悲鳴の激しさが徐々に増してゆく。



鈴音、もう本当に

さよなら

かもね…。

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