夕 月 夜
時間を忘れて抱き合っていると、いつの間にか別れの時が来る。
おれは渋々着物を着直し、百合香の乱れた着物も直してやる。
百合香はいつも、玄関まで見送ってくれる。
「ありがとうよ。
また来るさ」
「またのお越しをお待ちしております…」
何故かいつも 淋しい瞬間だ。
サヨウナラ。
百合香が呟くのが聞こえたような気がしたが…
きっと 気のせいだ。と
おれは振り返りもせず、家路についた。
まさか これが最後になるなんて、夢にもみなかった…。