夕 月 夜
「簪か…。綺麗だな」
とりあえず 俺は髪飾りを一通り眺めてみる。
そして、ある一つの簪に目が止まった。
あ…
これは、あいつに似合いそうだ。
キラキラしたモノが小さく揺れる簪。
俺は、それを手に取る。
「婆さん、これにする」
「あいよ」
「いくらだ?」
「いらないよ」
婆さんは、ニッコリと笑った。
いらない…?
「お前さんは特別だ。
持ってお行きなさい」
うんうん。と、婆さんは頷いた。