最後の恋
街はクリスマスムード一色だった。
店頭にはツリーやリースがそこら中に飾られていて、聴こえてくるBGMもクリスマスソングばかり。
もうすぐクリスマスなんだよね。
季節が変わるのが年々とても早く感じる。
一年なんて本当にあっという間だ。
「莉奈さん、ほんまは今日ランチして映画でも行ってブラブラして…って考えてたんすけど」
「うん」
「莉奈さん遊園地とかキライっすか?」
えっ、遊園地?
突然の想定外な質問に正直戸惑った。
「キライじゃないけど…」
「けど?」
「うん、もう何年も行ってないから。絶叫系とか乗れる自信ないかも」
サトルと付き合っていた時も、遊園地でデートなんてしたことがなかった。サトルも絶叫系は苦手っぽかったし。
だとしたら…あ、そうだ。
最後に行ったのは確か大学の卒業前にエリとサキと行った時だったから…22歳の時。
もう7年も前のことなんだ。
「そっか。じゃあやっぱり映画にしましょ!」
椎名はすぐにそう言ってくれて。何を見たいか私に聞いてくれた。
「でも椎名、遊園地行きたいんじゃないの?」
「いや、俺は莉奈さんと一緒ならどこでもいいっす」
「そう…」
ほんの少し、考えてみた。
「じゃあ、遊園地行こうか」
「えっ⁉︎」
本当は遊園地よりも映画の方がラクな気がした。
遊園地ではしゃげるくらいの体力が私にあるのかといえば正直分からないし。
ゆっくり映画を観る方が今の私にはちょうどいい。
でも、椎名は違う。
体力なんて有り余るくらいあるだろうし、はしゃいでいる姿が想像できる。
映画よりも遊園地の似合う若者だ。
「いいんすか⁉︎」
目をまん丸にしながら嬉しそうに笑う椎名。
「そのかわり絶叫系は一人で乗りなよ」
「ははっ、一人は嫌やから乗りませんって。よしっ、じゃあ早く行こ行こ!」
行き先が決まった途端、あがる椎名のテンション。やっぱりまだまだ若い。
無邪気に笑う横顔を見ていると、可愛いなぁと感じた。