最後の恋


休日も変わらず混み合う電車内はたくさんの人でいっぱいだった。


目的地の駅までは30分程度。

私達は並んでドアの横に立ったまま時々話をしたり、窓の向こうの移り変わる景色を一緒に眺めたりしていると、その30分なんてあっという間に過ぎていた。


目的地に着き、暖かかった電車内からその駅に降り立つとすぐにぶるっと身震いがした。

そして次は歯がカタカタ鳴ってしまうくらい寒さで体に力が入っていく。



「めっちゃ寒いっすね」


椎名が苦笑いを浮かべて私を見ている。


「そう?大丈夫よ、私は」


精一杯の強がりでそう答えたけど、椎名はクスッと笑い自分が巻いていたグレーのマフラーをふわっと私に巻いてくれた。


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